相続放棄の歴史
歴史的には日本には「家督制度」という制度がありました。家督制度とは家督を引き継いだ者がその家の長になるという制度のことで、古来からあった日本の伝統です。家制度・家父長制度ともいいます。
相続放棄の歴史(つづき)
明治民法には家督制度が法制化されており、家督を引き継いだ者は自分の家は当然のこと、分家等の一族全員を統率する権限を持っていました。だいたい長男が家督に指名されていました。
このようなことから、その家に相続が始まると長男が全財産を相続することになっていましたから、長男以外の者は相続放棄しなければなりませんでした。これが相続放棄の減刑です。
そして第二次世界大戦終了後、GHQ主導の下で明治時代の民法が改められ、家督制度は廃止とされました。
相続放棄の意味
相続は人が死亡すると始まることになります。死亡した人のことを「被相続人」と言いますが、被相続人の残した財産の中にはプラスの財産とマイナスの財産の両方があると思います。つまり相続財産を引き継ぐ相続人は、相続したい財産と相続したくない財産があることになります。
例えば、被相続人が現金 2000万円と借金1000万円を残して死亡したとします。この場合なら借金は現金が2000万円あり、借金の返済は可能ですので借金を含んだ全財産を相続しても問題はないと思われます。
また逆に被相続人が現金500万円と借金1000万円を残して死亡したとします。この場合は、上記のようにはいかず借金の返済は相続財産では不可能となります。このような場合には相続人は相続しない方法を選ぶことができます。それが相続放棄という制度です。
相続放棄をする理由は、一般的には上記の例のようにマイナス財産が多い場合にとられます。
相続の承認・放棄
相続放棄の説明をするには、相続の承認の説明を避けて通ることができないので、承認と併せて説明したいと思います。
承認と放棄の意義
相続の承認と放棄の存在理由は、相続人の意思を尊重することから認められた制度です。
(1)相続の承認
承認には「単純承認」と「限定承認」があります。単純承認は相続の効果を全面的に承認する制度のことです。つまり被相続人の全財産を相続することになります。 次に限定承認は、相続の効果を限定された相続財産から相続するという意味です。
(2)相続放棄
相続の効果を全面的に否定します。債務超過、つまり借金の超過が明らかな場合や、相続するのを潔しとしない時にするやり方です。

承認・放棄の性質
(1)相続の承認・放棄は、相続開始後に限られます。ですから相続の開始前、つまり被相続人の死亡の前に相続をすることはできません。たとえ死亡前に相続しても、その相続は無効です。
(2)相続の承認・放棄は原則として要式行為となります。つまり、承認や放棄をするには手続きが必要ということです。尚、単純承認する時の手続きは必要ありません。
承認・放棄の熟慮期間
承認・放棄をするかしないかを決める期間が、法律で決められています。その期間は「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月」とされています。「相続の開始があったことを知った」とは、「被相続人が死亡した事実を知った」という意味です。
つまり、例えば被相続人が死亡したのがある年の1月1日で、相続人が死亡の事実を知ったのが6月1日だとしたら、6月1日から3ヶ月という意味になります。
相続放棄は、相続の承認と共に法律できめ細かに規定されています。
単純承認・限定承認
単純承認
(1)意味
単純承認とは、放棄とは全く逆の意味で被相続人の権利を引き継ぐ相続形態のことです。先に記したとおり、民法には3ヶ月という熟慮期間が設けられていますが、この期間内に放棄も限定承認もしなければ単純承認したとみなされることとなっています。
(2)法定単純承認
次の場合は、相続人は単純承認したとみなされます。
(ア)相続人が相続財産の全部か一部を処分したとき。 例えば、相続財産の中に被相続人が残した債権があった時、その債権を取り立てて受領すればそれが一部であっても全部であっても単純承認とみなされます。
(イ)相続人が放棄や限定承認をした後で、相続人が財産の全部か一部を隠したり消費した場合には、単純承認したとみなされます。
限定承認
(1)意味
限定承認とは、相続によって得た限定された財産を相続する形態のことです。被相続人が相続財産の中に債務を持っていれば放棄したらいいでしょう。
しかし、相続財産の中に債務があるかどうか分からない、また債務があったとしてもプラスの財産でマイナスの財産を返せるような時は、限定承認という手段がとれます。つまり、プラスが多ければプラスで借金を返済すればいいのです。
(2)方法
(ア)相続人が複数いれば、共同相続人全員でしなければなりません。1人1人が限定承認すると、手続きが複雑になるからです。
(イ)相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ限定承認する旨の申述をしなければなりません。
特に限定承認は、放棄を検討する際には比較手段となります。
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